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1.小説より奇なる現実

“事実は小説より奇なり”

現実には、小説に書かれているような突飛なことすら、起こり得ることがある。
それがどんなに常識を逸脱していようとも、人間が考えつく限りのことは事実となり得るのである。





朝の早い時間、あまり寝起きのよくない私は重たい瞼を擦りながら、リビングへと続く階段を下りた。
リビングから続くキッチンからは、エプロンをつけた母親が作る家族の朝食のいい匂いがしていた。
お早うと一声かけてリビングを素通りし、洗面台の鏡の前に向かう。
そこには、寝ぼけ眼の幼い私の顔が映っていた。
もうすぐこの世界に生を受けて14年になる。
この世界の私には、両親と6つ年上の兄が居る。
みんなとても優しく、私を心の底から愛してくれている。
私もそんな彼らを、心の底から愛している。

…だけれど、たまに考える。
向こうの世界に残してきてしまった家族のことを。
向こうの世界の私は大学生で、そんな私には両親と6つ年下の弟がいて、大好きで大好きで、本当に心の底から愛していた。
否、今でも愛している。
この世界で生を受けて生きてきた14年間、忘れたことは1度たりともないと断言できるほどに。
どちらも私にとっては愛すべき家族であり、大切にすべき人たちである。
でも、向こうの世界の家族のことは誰にも話せないと分かっているから、それが辛いときもある。
年々、薄れゆく記憶に恐怖することもある。
そんなときは、私の寂しさや辛さを敏感に感じ取った兄が、優しく、でも力強く抱き締めてくれるのだ。
お前はここにいるんだよ、と耳元で囁いて背中を撫でてくれるのだ。
だから私はそんな兄に抱き付いて、縋って。
いつまで経っても兄離れできないでいる。

そんな兄も、私が中学に入った年に、少し遠くの大学に入り、私は強制的に兄離れさせられてしまったのだが。
今はもう、兄のいない生活にも慣れて、ようやく中学2年生。
また新しい年がスタートしたのだ。



そして、今年から物語もスタートし始める。
私はただそれを目を瞑って通り過ぎるのを待つだけ。



…のはずだった。



だけど、帝国学園が現れて、みんながボコボコにされていくのを見て、居ても経っても居られなかった。
サッカー部の人たちとは、顔見知り程度の付き合いだったけれど、それでも手を出さずには居られなかったのだ。
だって、彼らはただサッカーが好きで、部を守りたいだけなのに、これからもサッカーをやりたいだけなのに。
…帝国の彼らだって。

こんなの間違ってる!

気が付いたら、サッカー部のマネージャーさんから余りのユニフォームを奪っていて、帝国のキャプテンさんの前に立っていた。

「飛び入りですが、認めてもらえますか?」

後ろで冬海先生が何かごちゃごちゃ言っていたが、そんなの私の耳に入ってこなかった。
ただ私は、私に向かってニヤリとした笑みを向けてくる、帝国のキャプテンさんをじっと見据えていた。

「…いいだろう。許可しよう」
「ありがとうございます」

帝国のキャプテンさんは1度ちらりと後ろに視線を向け、私に向き直ると許可を言い渡し自陣へと帰って行く。
私も踵を返して、サッカー部のキャプテン君の元へ向かった。
キャプテン君はゴールのところでうずくまってはいたけれど、私を見てその大きな瞳をキラキラさせていた。

「勝手にごめんね。だけど、見ていられなかったんだ」
「いや!俺は全然大丈夫だぜ!それよりさ、一緒にサッカーやってくれるんだろ?ありがとうな!」
「…そう言ってもらえて助かったよ」

受け入れてくれたキャプテン君の言葉にホッと息を付いて、見方のサッカー部員を見渡した。
見たところ、MFの1年生が一番怪我が酷そうだったので彼と代わってもらった。
少林寺君と言うらしい。

「ごめんね。代わってくれてありがとう。ゆっくり休んでちょうだい」
「はい、よろしくお願いします!」

少林寺君は飛び入りの私に申し訳なさそうな顔をして、快く代わってくれた。
いい子だ。
何人か見方からの視線も感じたけど、今は気にしてられない。
…点を、取ってやる。

試合開始のホイッスルが鳴る。
ボールは雷門のFWの染岡君が持って上がる。
だけど体力が限界に近い彼は、いとも簡単に相手にボールを奪われた。
それも、強烈なチャージを受けながら。
吹き飛ばされる染岡君を見て、体が動いた。
相手とすれ違いざまボールを奪い、駆け上がる。
目指すは相手ゴール。
切り替えの早い帝国DF陣を引き付けて、ギリギリで交わしていく。
1人、2人、3人…4人!
目の前には、驚愕で目を見開いたGKとその後ろのゴールのみ。
私は足の間で挟んだボールに素早く回転をかけて浮き上がらせ、左に一回転した遠心力で力一杯ボールをゴールに叩き込んだ。
ボールは螺旋を描きながらGKへと向かっていく。
GKが構えたのが見えた。

「…ファントムボール」

小さく呟き踵を返した。
見なくても分かる。
彼には止められない。

ザンッとボールがゴールネットを揺らす音が聞こえ、雷門サッカー部から歓声が上がった。





――――――――――――――――――――
転生系夢主
みんなのお姉さん的位置に置きたい
そしてフラグをベッキベキに折りたい←
 

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