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1.確かに恋だった【鬼→円】

数年前の話だ。
俺、鬼道有人は中学2年生で、その年からサッカー部のキャプテンを務めていた。
俺の通っていた帝国学園は40年間無敗の記録を保持する学校で、影山総帥の教育の元俺たちも勝つことに必死になっていた。
特に俺は鬼道の養子に入った時に離れ離れになった妹の春奈と共に暮らすために、フットボールフロンティアで3年間優勝し続けるという約束もあったため、人よりさらに必死になっていた。
そして必死になっていたために、見えるはずのものも見えなくなっていた。

だけど、雷門中のサッカー部と練習試合をして、キャプテンの円堂守に出会って変わった。
円堂は本気でサッカーをやっていた。
本気でサッカーが好きだと、円堂の全てで語っていて、特に瞳が顕著だったと思う。
円堂の瞳は俺に語りかけてくるようだった。
『お前のやってるサッカーは楽しいか?』と、『本当にそれがお前のやりたいサッカーなのか?』と。
段々分からなくなっていった。
本当に俺がやりたいサッカーとは何なのか。

そして、あの事件から俺は総帥と決別したのだ。

円堂と出会って、円堂と日常を過ごして、円堂の人となりを知って。
そして俺はいつしか円堂に形容しがたい感情を持つようになった。
円堂の声を聞くだけで、円堂の笑顔を見るだけで、円堂に話しかけられるだけで、胸の奥が熱くなって。
無性に胸をかきむしりたくなるような気持ちになって、泣きたくもないのに勝手に瞳が潤み始める。
最初俺はその症状がただの胸焼けか、何かの病気なのかと思った。
だって相手は円堂で、男で・・・。
だけど本当は俺にもわかっていた。
話に聞いていただけの、俺には縁のない、その感情の名を俺はちゃんと知っていた。



それは、確かに恋だった。



今では高校も別に進み、大学生になってみんなと段々疎遠になっていって。
だけど俺と円堂と豪炎寺はよく集まってはサッカーをしたり遊んだりもした。
円堂は仲間を大切に思うやつだから、サッカーで出会ったやつらともよく連絡を取り合って、会っているという話もよく聞く。

俺は、少しずつ、少しずつ、あいつから離れていった。
この感情は表に出てはいけないもので、俺の中だけで消化していくものだと分かっているから。

早く、早く誰かとくっついてしまえばいいんだ。
昔からの仲の木野や雷門、他にももっと多くのやつから想いを寄せられているくせに、誰一人として円堂とくっついたやつはいない。
いろんなやつを惹きつけるくせに、そう言ったことには人一倍鈍いあいつは、本当に酷いやつだ。


俺は苦く笑って、明日会う約束をしている酷いやつの顔を思い浮かべた。





 

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